ブローグ横丁

2017年2月10日 赴いたり、啜ったり、そんなことがあったり。

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小さな八百屋へ赴いた。老夫婦が二人で営んでいる。今だに量りに野菜を載せソロバンで勘定し釣り銭をカゴに入れている。客はそう多くはない。取材に来ましたと告げるとおかみさんは「あんたらに昼飯こさえといたんよ」と炊きたての白米と鮭の味噌汁をよそってくれた。

...旨かった。旨くて少し泣きそうになった。そんなことがあったり。

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札幌駅裏の茶店へ赴いた。雰囲気がいい。BGMも秀逸。無論珈琲も旨い。客は大人が多く皆穏やかに談笑していた。その店の片隅に座り片耳にイヤホンを差した。競馬放送を聞くためだ。メインレース。馬たちがゴール前に差し掛かる。アナウンサーが絶叫する。逃げるか。差すのか。握りこぶしに力が入った。

...が、そんな素ぶりは露にも見せず、珈琲を愉しむ漢を演じた。そして負けた。そんなことあったり。

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人口三千人余りの小さな町へ一泊二日の小さな取材旅行へ赴いた。いい具合に侘び寂びた駅舎と町民の飾らない言葉と店主の生真面目さを紡いだようなラーメンそして道行く子供たちの天使のごとき笑顔に心が揺さぶられてしまった。

...人生が二度あれば。この人生が二度あれば。井上陽水の歌が頭の片隅でリフレインした。そんなことあったり。

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立ち食い蕎麦に赴いた。月見そばとワンカップ。金の無さと節操の無さ。取り敢えずの空腹と取り急ぎの依存。単なる満たしと早々たる充填。微妙な美味さと絶妙な旨さ。満腹と勢い。啜りと含み。出汁と麹。俺と俺。

...ごっそさん。そんなことがあったり

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大好きな酒場に赴いた。この酒場は佇まいと物語と分別が整っている。客も領分をわきまえた方ばかり。己の稚拙さを恥じながらも末席に座らせて頂く。マスターは紆余曲折の人生をさらりと語ってくれる。心に染みる。有難い。ふと見ると壁では松鶴家千とせが彼の娘と並んでピースサインを晒している。ピースしながら「わかかるかなーわかんねーだろーなー」と云っている。何度も何度も云っている。

...つまり飲み過ぎである。そんなことあったり。

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定番の酒場に赴いた。カウンターの横の会話。「私はパジャマ。下着もつけない。ただベッドに入る時はちゃんと着てるのに朝はいつも裸になっちゃってるの。なんでなの。ホント恥ずかしいの」語っているのは艶のある女性だ。艶はあるが年季も入っておりつい先日米寿を超えたと笑う。可愛らしい。清々しい。

...その横で俺はレバーを喰っていた。そんなことがあったり。

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