スマイル書房

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ここはガンコ店主がドクダンとヘンケンで本の価値を決める小さな古本屋さんです。
『謎とき『罪と罰』』 (新潮選書)
買い取ってやる度
★★★★★

佐藤の中で目標を掲げていることのひとつに、
いつか"『カラマーゾフの兄弟』を読み切る"
というのがあります。

20代の頃、意気込んで挑んではみたものの、
まったくもって歯が立たず、挫折。(亀山郁夫訳)

その苦い経験もあったので、
別の作品で弾みをつけ、勢いのまま読み始めればいけるのでは!......と思い至り、
手をつけた『罪と罰』&『悪霊(現在進行中)』。

『罪と罰』は読了しましたが、話を追うので精一杯。
作品の勢いに引き込まれて読み切っただけで、
なんかよくわからなかったのです。

「このままでは、また挫折の繰り返しだ!......」(ラスコーリニコフ風に)
というわけで、江川卓氏のお力を借りることに。

ロシア文学者でもある氏であればこその謎ときが、
本当に目からウロコが落ちまくり!

あの世でドストエフスキーに聞いてきたの??
(今はもう本人に直接聞いているかもしれないですね)
というくらいの鋭い洞察力&深い知識によって、
作者からのメッセージを読み解いていきます。

なんの変哲もない場面にこんな意味が!
前半と後半のここが呼応しあっているのか!
ていうか、
振り返ることが多すぎて読み進められない!!現象に陥ってしまうので、
作品読了後に、読むのをオススメします。

たとえロシア語が読めていたとしても、
真の意味で、読み解くことは難しいだろうなぁー。

世で名作と呼ばれているものは、
やはり名作なのだねえと、
気付かせてくれる一冊なのでありました。

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訳違いで3冊読み比べましたが、
江川氏の訳が、佐藤的には一番しっくり。

工藤精一郎氏訳は、
重厚すぎるためかなかなか読み進められず。
亀山郁夫氏訳は、
文章がさっぱりしすぎている印象を受けました。

カラマーゾフを江川卓訳で読みたいんですけど...。
まじで再版希望!

『つるとはな』 (つるとはな)
買い取ってやる度
★★★★★

本屋さんをぷらぷらしていたある日。
変わったマガジンキャッチの雑誌を発見しました。

「人生の先輩に聞く」

そして表紙には、ご高齢の夫婦とおぼしき写真。
ページをめくっていくと、かなり年上の方々の記事ばかり。

店番 佐藤は、雑誌を隅々まで読む派ですが、
これはどの記事を読んでも、本当に興味深い。

どの方々も、とくに説教じみることもなく、
人生の大切なことを教えてくれている感じなんです。

アンチエイジング!とか、
美魔女!とか、
若い気持ちを保て!とか、
うるさいことが一切書いてないのもいい。

そして、
巻末の松家仁之さんの短編小説も、とってもいいんです。
心がざわざわするような、少し切なくなる物語で。

実家にいた頃は、祖母と一緒に暮らしていた佐藤。
ばあちゃんにいろんな話、もっと聞いとけばよかったな。
死んだとき、聞いてみよう。


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表3・表4とに、巻末の小説がかかってるのにびっくり。
こういうこと、やってもいいんですよねえ。
固定概念にしばられている、自分に喝!

創刊号に掲載の火野正平のインタビュー、
なまらどきどきさせられますよ.........
恐るべし、火野正平。

『死ぬまでに東京でやりたい50のこと』 (株式会社青月社)
買い取ってやる度
★★★★☆

私は、数えるほどしか
東京に足を運んだことがない。

それも、友人の結婚式に
お呼ばれされるケースがほとんど。

いつも酒を飲むだけ飲んで、
慌ただしく北海道にUターンする。

観光名所に行くことはもちろん
美術や芝居を楽しんだこともなく、
ミッドタウンやkitteでショッピングと
洒落込もうぜ、なんてこともなく、
ましてやギロッポンやザギンで
チャンネーとオイニーがツイキーなど
夢のまた夢(意味不明)。

ま、早い話が東京初心者。

だけど生来の"玄人に見られたい欲"が災いし、
求める情報は上級者向けなのだ。
そんなワケで
『死ぬまでに東京でやりたい50のこと』を
ついに購入してしまった。

本書はタダの東京ガイドなんかではなく、
生粋の江戸っ子も知らないような
ディープな場所へ著者が突撃する。

紹介しているスポットがまあスゴい。

狂気に満ちた店主が踊ったりする居酒屋。
「死ね!」と全力で罵倒されるトルコ料理屋。
謎のロボットショーが展開されるレストラン。
住職と解説員がせめぎあう寺の中のプラネタリウム。
読後は満漢全席以上の胃もたれ感である。

だけど決して怖いもの見たさではなく、
取材対象に本気でぶつかっていることが
伝わってくるのは好感度大。

たとえば、「死ね!」のトルコ料理屋さんの店主が、
なぜそんなに荒々しい接客をするのか
丹念にひもといた記事があり、
理由は意外とグッときたりするのだ。

「東京はもう飽きちゃった〜」なあんて
ちょっぴり鼻につくコメントをされる方にも、
ぜひぜひオススメしたい一冊。

ただ、この本の悪い点を一つだけ挙げるなら、
各所についてかなり詳細にルポされているので、
「ま、行かなくてもいいか」と思っちゃうのだ...。

『寄居虫女(やどかりおんな)』 (KADOKAWA)
買い取ってやる度
★★★★☆

ズワイガニはカニだけど、タラバガニはヤドカリの仲間だからホントはカニではないという話を聞いたことがある。

えーっ!カニと付いてるのに、カニじゃないの!?
しかもヤドカリなんて、ガッカリだぜ!と、たいそう衝撃を受けたものだ。

さて、今回、店番ヒロナカが紹介するはそんなヤドカリが主人公・・・もとい。
ヤドカリのように他人の住まいに寄生する「寄居虫女(やどかりおんな)」という作品。

洗脳というかマインドコントロールというか、手練手管で家人に取り入り、いつの間にかその家の支配権を握る。そして財産をすっかり食い潰すと、それまでの宿を捨て、新たな家に乗っ取りを掛ける・・・というなんとも恐ろしいハナシ。

なかなかのドキドキ感であっという間に読んでしまったが、やはり気になるのはヤドカリとタラバガニが同じ仲間かどうか。

ウィキペディアによると、最近の分類では両者はそれぞれ別のカテゴリに分けられているとか。

これでタラバも安心して「ワタシ、やっぱりカニでした」と、思い切りアピール出来るというわけ。

ちなみにヒロナカはタラバより毛ガニ派。

『序の舞』 (中公文庫)
買い取ってやる度
★★★★★

日本画には全くもって疎い佐藤ですが、
上村松園は少し気になる存在でした。

女性は家庭に入り、
家を守ることが美徳とされていた時代、
誹謗中傷を受けつつも、
すさまじい情熱で画家への道を歩んだ女性。
その上村松園をモデルにしたのが、
この「序の舞」です。

気品溢れる画風からは、
想像もできないほどの壮絶な人生。
"女だから"というだけで、
男たちからは嫌がらせされるわ、
親族からは絶縁されるわ、
家が二度も燃えちゃうわで、
波瀾万丈すぎる人生に、佐藤はハラハラドキドキ。
もう、徹夜で一気読みです!!

悔しさを飲み込みながら、
ひたすらに絵筆を握り続ける松園(作中では松翠)。

親子3人、けして世に向けて声を荒げるでなく、
悔しさを内に向け、画へと昇華させていく様が、
同じ女性として共感しまくりなのであります。

現代女性が、
性差別を受けることがなくなったにしても、
女であれば誰でも一度は、
性別を弊害に感じたことがあるはず。
(ないですか?)
女性にこそ読んでほしい!一冊です。

もう、これは次の朝ドラにしてほしいなぁ。
それが無理なら、NHKの木曜時代劇枠でもいい。
テレ東の新春2夜連続時代劇でも、
2夜ぶっ通しで見ます。

師匠との道ならぬ関係が朝ドラには厳しいかも、、、ですが、不倫は『花子とアン』で実証済みなので、
ぜひぜひ朝ドラ化してほしいものです。

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週末に見に行ってまいりました、
上村松園展@山種美術館。
どの絵も本当に美しく、素晴らしかった......。

「序の舞」「焔」も、いつか生で見てみたい。
札幌に来ないかなぁ。

『海の底』 (角川文庫)
買い取ってやる度
★☆☆☆☆

「大人向けライトノベル」
というジャンルがあるらしい。

そもそもライトノベル自体がよく分からないけれど、
イメージでは表紙に「萌え」的なイラストが描かれた
ちょっとアレな小説。

または、








のような狙いすぎの文字組みに、
脱力させられる本。

と、まあヘンケンに満ち満ちているが、
自分には縁がないジャンルだと思っていた。
が、ついに手に取らさったのだ(北海道弁)。

本書はのっけからすさまじいほどのSFっぷり。
横須賀港に巨大エビの大群が襲来するのだ。

  横
須 賀
に 巨 

エビ!

(奇抜文字組みエビバージョンに
チャレンジしてみたが...魚に見える...)

この巨大エビときたら陸に上がれるし、
拳銃の弾も通さないし、
しまいには人を喰らうしで暴れたい放題。

物語は自衛隊が出動するための「条件づくり」に
奔走する人々の話が一つの柱。
もう一つは
潜水艦に避難した海自隊員と小中高校生たちとの
思春期なやりとり。

いやはや後者の海自隊員と女子高校生の恋模様が
もう甘酸っぱくて甘酸っぱくて。
何度もえずいてしまいそうなところを、
グッとこらえてほのかなラブを飲み込んだ。
後日、胸焼けしたことは言うまでもない。

本書は表紙もいたってフツウだし、
裏表紙のあらすじを見ずに購入したので
あとがきを読むまで
「大人向けライトノベル」だとは知らなかった。

ファンタジー要素が強すぎて、
表現も子どもっぽいので、
何だかな〜と思いながらも読破したのだが...。

けれど、決して本書が悪いワケではない。
たぶん私がターゲットにそぐわない読者なのだ。

若者や活字に慣れていない人には、
きっとおもしろい作品として映るはず。

だけど、あえてこう言いたい。
「大人向け」ってなんなんだ、と。
「大人」の定義とはなんなのか、と。
そんなことを考えさせられた
(いや考えていないけれど)一冊。

『海賊とよばれた男(上)』 (講談社文庫)
買い取ってやる度
★☆☆☆☆

「"本屋大賞"受賞」で話題の書籍が文庫に。そんなポップの言葉に惑わされ、ひとまず上巻だけ購入してみました。

、、、しかし「本屋大賞」受賞の本なはずなのに、おもしろくない。どうして? おもしろく感じられないのは、佐藤サイドの問題なの??
(そもそも本屋大賞という賞が怪しいけれども......)

昨今よくある「感動を押し付ける系邦画」を見た後のような、なんとも言えないモヤモヤ感、とでも言いましょうか。
ていうか、作家が国岡鐵造(出光興産創業者がモデルのよう)に肩入れしすぎの文章で、気持ち悪さすら感じてしまう。

壮大な物語にあるはずの、ワクワク感がないし。文章力の稚拙さゆえ、なかなか読み進められず。

お風呂の中でも、トイレの中でも、布団の中でも、通勤中でも読んでるのに、まだまだ終わらない。

いつまでも読んでいるものだから、もう本も、しっわしわになってしまいました。

パトロン日田は、もしかしてゲイ?
まじでユキがかわいそう。
そんな感想だけが残る一冊でした。

下巻の内容はアマゾンで見ようっと。

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ぼっきぼきの、しっわしわ.........

『ことばになりたい』 (毎日出版社)
買い取ってやる度
★★★★★

15年以上前に放映されていた、
『UNITED ARROWS』のCMが佐藤は大好きで、
◎You Tube(リンク先、音が出ます!)

浅ヤン(懐かしい...)の間に放映されていたのを録画し、繰り返し繰り返し、見たものでした。

この時のアートディレクターが、
室蘭が育んだ巨匠 葛西薫氏。

そのCMコピーを担当していた、一倉宏氏の作品集です。
そして、前述 葛西氏が装丁を手掛けられてます。

佐藤は、あんまり容易く「胸キュン」はしない方だと思いますが、
もうこれを読んでいる時は、終始キュンキュン!

もうなんと言ってよいのやら。
佐藤の中の「ノスタルジースイッチ」がONになりっぱなし。
昔、付き合ってた人を街で偶然見かけた時のような、
そんな、甘酸っぱい気持ちになってしまうのです(照).........。

佐藤のお気に入りは、
『UNITED ARROWS green label relaxing』の
広告コピーで構成された、第2章。

特に「会いにいけばいいのに」と、
「この駅で君と待ち合わせて」がすごく素敵です。

あとがきにある、
広告コピーへの氏の思いにもぐっときたりして。。。

『人生を3つの単語で表すとしたら』も、
"キュン死に"必至!(もう書店では売っていないかも...ですが)

「壁ドン」ごときでは、
胸キュンなどしないわいー!!

『その女アレックス』 (文春文庫)
買い取ってやる度
★★★★☆

遅まきながら、
明けましておめでとうございます。
「スマイル書房」店主です。
今年もよろしくお願いいたします。

私は店番を長らく放棄していた。
なぜなら一冊の本を手に取るため、
渡仏していたからだ。

というのはツマラナイ冗談。
この書き出しには理由がある...
ようなないような。
(サボっていてスミマセン)

本書はフランス生まれの大ヒット作。
世界中で翻訳されているのだそう。
帯の文句に弱い私なんかは、
「あなたの予想はすべて裏切られる!」
「慟哭と戦慄の大逆転サスペンス」
などと謳われた日には、
すぐに手を出してしまうのだ。

それら惹句の通り予想を裏切られたし、
慟哭まではいかないけれど、
胸に迫るものは感じた内容。
個人的にとても面白く深い小説だった。

ただ、海外文学に慣れない私は、
日本語訳の文章に悩まされたわけで。

細かいけれど、「○○は○○した。
なぜなら○○だからだ」
という文体が頻出するのが
気になって気になって仕方なかったのだ。

中学生のころ、
教科書の英文を和訳した時のような感じで、
むしろ懐かしさまでこみ上げてきた。
ついでに...

"え〜と、何だっけ、あの英語の構文的な...
そうそう、ホワイ〜?ビコーズ〜だ!
習ったのは中学1年生の時だったかな〜"

とか

"そういえば当時はリーゼントを赤く染めた
おっかない3年生がいて、
目を合わせないようにしていたな〜。
あの赤髪は血で染まったという
まことしやかなウワサもあったな〜"

といった具合に一度気になり始めたら、
ホワイ〜?ビコーズ〜的文章が出てくるたびに、
意識が中学時代へトリップしそうになる。

集中できないのは翻訳のせいかって?ノー、ノー。
ビコーズ店主が散漫な質だからだ...。

オチがグダグダだと突っ込まれそうな、
虫のインフォメーション。
本書を読了し、ラストを語り合いたい方がいれば、
ぜひ酒席をトゥギャザーしようぜ!

『コの字酒場はワンダーランド』 (六耀社)
買い取ってやる度
★★★★☆

コの字カウンターを意識するようになったのはいつからだろう。

古酒場、末枯れ系の居酒屋、角打ち酒場、
立ち飲み屋、場末の食堂...。
チェーン店には醸し出せない
風情や佇まいを巡り訪ねるうちに
いつの間にやらあの様々な必然性が導いた
「コ」の字の小宇宙に
魅了されていったのだろうなぁ。

とはいっても。

実は札幌にはコの字カウンター酒場はそう多くない。
ワタクシの大脳皮質の奥の酒場索引を捲っても
両手で足りるほど。...チェッ!


そんな妙なバイアスのかかったローカル飲兵衛の
欲求不満を解消してくれるのがこの本。
花の東京周辺の、
愛すべきコの字カウンター酒場の綴りだ。

もちろん、野暮な酒場のガイドブックの類ではない。

品書きに宿る気格、「コ」の微妙な形態、カウンターの材質、
馴染客らの趣き、焼鳥や煮込みの味わい、
さらにコの字の内側の店主や
女将の気風や振る舞いまで、
古酒場に対する畏怖と敬愛を礎に、
その情景を行間に映しだすかのごとく、
丁寧に、実に丁寧に記している。

だから、行きたくなる。
その風情に情緒にモーレツに浸りたくなる。
燗酒の香の漂うアルコール銀河に
ふわふわふらふらと漂いたいとリアルに切望してしまう。


なので。
つまり。
要するに...

 


札幌ローカル飲兵衛の欲求不満は
いつまでも解消されないとゆーことのだ。

...チェッ!

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