スマイル書房

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ここはガンコ店主がチクチク、ブツブツ言いながら、
あくまでドクダンとヘンケンで本の価値を決める小さな古本屋さん。
「これぞ!」という作品には、ビッグスマイルで買い取るそうですが、
未だその笑顔を見た者はいないとか。
さあ、今日持ち込まれる一冊の運命やいかに!
『海賊とよばれた男(上)』 (講談社文庫)
買い取ってやる度
★☆☆☆☆

「"本屋大賞"受賞」で話題の書籍が文庫に。そんなポップの言葉に惑わされ、ひとまず上巻だけ購入してみました。

、、、しかし「本屋大賞」受賞の本なはずなのに、おもしろくない。どうして? おもしろく感じられないのは、佐藤サイドの問題なの??
(そもそも本屋大賞という賞が怪しいけれども......)

昨今よくある「感動を押し付ける系邦画」を見た後のような、なんとも言えないモヤモヤ感、とでも言いましょうか。
ていうか、作家が国岡鐵造(出光興産創業者がモデルのよう)に肩入れしすぎの文章で、気持ち悪さすら感じてしまう。

壮大な物語にあるはずの、ワクワク感がないし。文章力の稚拙さゆえ、なかなか読み進められず。

お風呂の中でも、トイレの中でも、布団の中でも、通勤中でも読んでるのに、まだまだ終わらない。

いつまでも読んでいるものだから、もう本も、しっわしわになってしまいました。

パトロン日田は、もしかしてゲイ?
まじでユキがかわいそう。
そんな感想だけが残る一冊でした。

下巻の内容はアマゾンで見ようっと。

smile_kaizoku.jpg

ぼっきぼきの、しっわしわ.........

『ことばになりたい』 (毎日出版社)
買い取ってやる度
★★★★★

15年以上前に放映されていた、
『UNITED ARROWS』のCMが佐藤は大好きで、
◎You Tube(リンク先、音が出ます!)

浅ヤン(懐かしい...)の間に放映されていたのを録画し、繰り返し繰り返し、見たものでした。

この時のアートディレクターが、
室蘭が育んだ巨匠 葛西薫氏。

そのCMコピーを担当していた、一倉宏氏の作品集です。
そして、前述 葛西氏が装丁を手掛けられてます。

佐藤は、あんまり容易く「胸キュン」はしない方だと思いますが、
もうこれを読んでいる時は、終始キュンキュン!

もうなんと言ってよいのやら。
佐藤の中の「ノスタルジースイッチ」がONになりっぱなし。
昔、付き合ってた人を街で偶然見かけた時のような、
そんな、甘酸っぱい気持ちになってしまうのです(照).........。

佐藤のお気に入りは、
『UNITED ARROWS green label relaxing』の
広告コピーで構成された、第2章。

特に「会いにいけばいいのに」と、
「この駅で君と待ち合わせて」がすごく素敵です。

あとがきにある、
広告コピーへの氏の思いにもぐっときたりして。。。

『人生を3つの単語で表すとしたら』も、
"キュン死に"必至!(もう書店では売っていないかも...ですが)

「壁ドン」ごときでは、
胸キュンなどしないわいー!!

『その女アレックス』 (文春文庫)
買い取ってやる度
★★★★☆

遅まきながら、
明けましておめでとうございます。
「スマイル書房」店主です。
今年もよろしくお願いいたします。

私は店番を長らく放棄していた。
なぜなら一冊の本を手に取るため、
渡仏していたからだ。

というのはツマラナイ冗談。
この書き出しには理由がある...
ようなないような。
(サボっていてスミマセン)

本書はフランス生まれの大ヒット作。
世界中で翻訳されているのだそう。
帯の文句に弱い私なんかは、
「あなたの予想はすべて裏切られる!」
「慟哭と戦慄の大逆転サスペンス」
などと謳われた日には、
すぐに手を出してしまうのだ。

それら惹句の通り予想を裏切られたし、
慟哭まではいかないけれど、
胸に迫るものは感じた内容。
個人的にとても面白く深い小説だった。

ただ、海外文学に慣れない私は、
日本語訳の文章に悩まされたわけで。

細かいけれど、「○○は○○した。
なぜなら○○だからだ」
という文体が頻出するのが
気になって気になって仕方なかったのだ。

中学生のころ、
教科書の英文を和訳した時のような感じで、
むしろ懐かしさまでこみ上げてきた。
ついでに...

"え〜と、何だっけ、あの英語の構文的な...
そうそう、ホワイ〜?ビコーズ〜だ!
習ったのは中学1年生の時だったかな〜"

とか

"そういえば当時はリーゼントを赤く染めた
おっかない3年生がいて、
目を合わせないようにしていたな〜。
あの赤髪は血で染まったという
まことしやかなウワサもあったな〜"

といった具合に一度気になり始めたら、
ホワイ〜?ビコーズ〜的文章が出てくるたびに、
意識が中学時代へトリップしそうになる。

集中できないのは翻訳のせいかって?ノー、ノー。
ビコーズ店主が散漫な質だからだ...。

オチがグダグダだと突っ込まれそうな、
虫のインフォメーション。
本書を読了し、ラストを語り合いたい方がいれば、
ぜひ酒席をトゥギャザーしようぜ!

『コの字酒場はワンダーランド』 (六耀社)
買い取ってやる度
★★★★☆

コの字カウンターを意識するようになったのはいつからだろう。

古酒場、末枯れ系の居酒屋、角打ち酒場、
立ち飲み屋、場末の食堂...。
チェーン店には醸し出せない
風情や佇まいを巡り訪ねるうちに
いつの間にやらあの様々な必然性が導いた
「コ」の字の小宇宙に
魅了されていったのだろうなぁ。

とはいっても。

実は札幌にはコの字カウンター酒場はそう多くない。
ワタクシの大脳皮質の奥の酒場索引を捲っても
両手で足りるほど。...チェッ!


そんな妙なバイアスのかかったローカル飲兵衛の
欲求不満を解消してくれるのがこの本。
花の東京周辺の、
愛すべきコの字カウンター酒場の綴りだ。

もちろん、野暮な酒場のガイドブックの類ではない。

品書きに宿る気格、「コ」の微妙な形態、カウンターの材質、
馴染客らの趣き、焼鳥や煮込みの味わい、
さらにコの字の内側の店主や
女将の気風や振る舞いまで、
古酒場に対する畏怖と敬愛を礎に、
その情景を行間に映しだすかのごとく、
丁寧に、実に丁寧に記している。

だから、行きたくなる。
その風情に情緒にモーレツに浸りたくなる。
燗酒の香の漂うアルコール銀河に
ふわふわふらふらと漂いたいとリアルに切望してしまう。


なので。
つまり。
要するに...

 


札幌ローカル飲兵衛の欲求不満は
いつまでも解消されないとゆーことのだ。

...チェッ!

『フォントのふしぎ ブランドのロゴはなぜ高そうに見えるのか?』 (美術出版社)
買い取ってやる度
★★★★★

「昔"U"の字はなかった。」
「高級ブランドのロゴが高級に見えるわけ」
などなど、

「欧文書体1」「欧文書体2」の総集編のような内容で、
内容もいいとこ取りで、読みやすい!

書体の世界は奥深いなぁ...。
仕事してるあいだだけ、祖父江慎が乗り移んないかなぁ...。

「ヒラギノ」作者、書体デザイナー小林章氏 著です!

『償い』 (幻冬舎文庫)
買い取ってやる度
★★★☆☆

怪しいヤツほど犯人ではない。
これは推理モノ「あるある」
として殿堂入りしている(店主調べ)。

人は怪しくないヤツの中から犯人を予想し、
結末に向かってページをめくるのだ(店主調べ)。

そして物語のラスト。
「はい、残念。犯人は意外なア・イ・ツ。
まだまだ甘いね〜ボ・ウ・ヤ」
という作者の悪意(被害妄想)にふれることで、
「こんちきしょう!てやんでぇ!」と
別の作品を手に取る情熱がわくってもの。

『償い』は元医師でホームレスの主人公が、
ある町の連続殺人事件に関わり、
すったもんだの末に犯人に迫っていく。

焦点は「怪しいヤツ」。
本作の犯人を予想するとき、
大半の読み手は2人に絞ると思う。

ものスゴく作為的に怪しいヤツと、
ものスゴく作為的に怪しくなさすぎて
むしろ怪しいヤツ。

どっちだ!どっちなんだ!?
ええい、ままよ!
「あるある」に素直にのっとって、
ものすごく作為的に怪しいヤツは除外!

結果は...大当たり!勝ったぜ!

冷静に考えてみる。
...いや、誰と戦っていたのだ。
読書はそもそも戦いですらない。
こんな楽しみ方は「なしなし」だ。
推理モノとの向き合い方を、
思い直すきっかけとなった一冊。

ちなみに本作は、
ミステリーに分類されるらしい...。
そもそも推理モノじゃないじゃん!

『競馬場で逢おう』 (宝島社)
買い取ってやる度
★★★★★

あんな人、もう世に出てこないだろうねぇ。

偉業を成し遂げた人が亡くなると
誰彼なく囁く常套句だけれど
このフレーズがドンピシャな人だわね、寺山修司。

詩人であり劇作家であり歌人であり演出家。

昭和の混沌たるカルチャーの先鋒を
鋭利な感覚でグイグイ切り拓いた表現世界の巨星。


...たる彼が記した名著が「競馬場で逢おう」。
昭和45年から死の直前まで報知新聞に連載した競馬予想エッセイだ。


いやはや面白い。
自分が競馬を嗜むからってのもあるんだろうけど
鬼才寺山修司が垣間見せる
斜に構えぶりというか、粋な堕落感みたいなのが
もうたまらんのだよね。
肝心の予想も、
寿司屋の政やミスト◎コのももちゃんとの
くだらねー会話からひねり出したり、
世相に対するシニカルな語呂合わせだったりする上に
あらゆる思考の根幹には、
一番人気などクソくらえの反体制スピリッツが渦巻くもんだから、
全然当たらない。外れまくり。スカに続くスカだ。


だが当の寺山修司はどこ吹く風。
外れようが、一番人気が来ようが、大損しようが知ったこっちゃない。
それまでの連戦敗戦を気にすることもなく
飄々と淡々と今週の馬柱を眺めるのだ。

実に潔い。実に鯔背で、実にカッチョよい。

で、オレもこうなりたい。
オイラもこんな立ち振舞がしたい。
ぜひともなんとか、自分も寺山化したいと、
ワンカップ片手に鉄火場(競馬場)に赴いたりするのだけれど。


結局は... 最終レースの前、
ポケットに突っ込んだ指先で
帰りの地下鉄の小銭をしっかり確認するあたりの

己の小市民さにただ辟易とするだけだったりするのだよね。

ロードオブテラヤマは、遠きけり   ...アーメン。

『高校入試』 (角川書店)
買い取ってやる度
★★★☆☆

高校入試を受けたのは今から、えーと(計算中・・・)約20年前!

あまりに過去すぎて、ちょっと気絶しそうになる。

当時、旭川の中学に通い、家の都合で岩見沢の高校を受験。
受験会場に友人の姿はなく、一人寂しく弁当を食った記憶が蘇る・・・。

なんて、私のどーでも良い思い出はさておき、
高校入試をテーマにしたのが本作。

作者は「告白」「贖罪」の湊かなえ。
手の込んだ伏線があっちこっちにタップリと張り巡らされているのは、さすがミステリーの名手。

ところが準備に張り切りすぎたせいか、肝心のクライマックスがアレレ?な感じ。

付き合いたての女子が作る晩御飯ごとく、
ちょっと良い食材を買い込み、
普段使ったことのない調味料で味付け、
じっくりコトコトに煮込んで、
タップリと手間ひまをかけた割には仕上がりはフツーという・・・。

残念。

だが男子たるもの、ここは「超ウメーよ!」と、モリモリ食さねばならない。

間違っても「フツー」などと言ってはいけないのだ。

『さあ、地獄へ堕ちよう』 (角川文庫)
買い取ってやる度
★☆☆☆☆

4時間にも及ぶ列車の旅。
車中で読もうと思っていた本を家に忘れた。
発車時刻まで残り5分。行動はひとつ。
私は叫ぶ(心の中で)。
「必殺平積中適当一冊選抜!」。

無事に乗車して裏表紙のあらすじに目を通す。
ふむふむ、主人公はSM嬢?
なになに、身体改造をすすめてくる同僚!?
なんとなんと、凄惨な姿の死体写真が
アップされるサイト!?!?

...ちょっとカゲキすぎやしませんかね。

物語は主人公の友人が殺され、
殺人請け負いサイトの「ようなもの」に
写真がアップされるところから急展開。
このサイトの事件に関しては
どういうワケか警察はダンマリだから、
自分で運営者を見つけてやる!
という感じだったと思う。

「思う」というのには理由がある。

身体改造やらSMやら殺人やら自殺やら、
「痛み」や「死」といった重たい内容が
物語の一つのテーマだ(と思う)。

反して主人公のノリが青春なのだ。
冒頭は無気力な性格だったが、
友情とか、正義とかに目覚めて、
後半に進むにつれどんどん青春していく。

主人公が人を殺めても、
「そんなの若さゆえのア・ヤ・マ・チ」
みたいな軽い扱い。
夕陽に向かって「バカヤロー!」すれば、
何をしても帳消しになりそうなくらい
もう、清々しいほどに青春するのだ。

さらに地の文と台詞回しもイマドキ言葉だから、
いっそうライトに感じる。

そのテーマの重さと青春と軽いタッチの
チグハグが気になって、気になって、
内容があまり頭に入ってこなかった。

気になるならもう一度読み直せばいいって?
スミマセン、某古書店に売っちゃいました。

『砂の王国』 (講談社文庫)
買い取ってやる度
★★★☆☆

窮地に陥った人を宗教が救う。
というと入信のほうを思い浮かべそうだが、
本作の主人公は路上生活というピンチを、
宗教の立ち上げで切り抜ける。
それもインチキ宗教で。

教祖は絶世の美男子。師範代は易者。
いずれも路上生活で出会った少し難アリの人物だ。
主人公は事務局長として2人をコントロールする。

本作は上下巻に分かれていて、
上巻はホームレス生活のやたらとリアルな描写から、
宗教組織の立ち上げまで。
下巻は信者の熱が予想外にふくれあがり、
タイトル通り砂のように崩れていく結末へ向かう。

ご都合主義や伏線を回収できていない部分はあるが、
全体にテンポの良い文章なので一気に読めてしまう。

妄信の怖さとか、人間の欲深さとか、
刹那的な打算の軽薄さとか、嫉妬のおぞましさとか、
人それぞれに受け止め方がありそう。

店主の場合は読み終えた後、こんなことを思った。
当店の「裏オーナー(謎の人物)」から
もしクビを言い渡されたら、
路上生活をして美男子と占い師を見つけて、
インチキ宗教を立ち上げて、
グレーゾーンの仕事に手を染めて、
信者を手品やコールドリーディングでだまして、
自作の壺を高値で売りつけて...。
という面倒なビジネスプランを実行する前に、
某古書店全国チェーンの
「BO●KOFF」に履歴書を送ることだろう、と。

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