スマイル書房

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ここはガンコ店主がドクダンとヘンケンで本の価値を決める小さな古本屋さんです。
『もし僕らのことばがウィスキーであったなら』 (新潮文庫)
買い取ってやる度
★★★★★

わたくし、酒が好きです。


酒の"場"が楽しい日があり(そこに集う人々と楽しい時間を共有したい、という気持ち。)、

酒の"場"の、雰囲気なり 佇まいなりを楽しみたい、という日もあるけれど、

基本的にわたくし、酒"そのもの"が大好きなんだ。

◆◆◆


一杯めの冷えたビールは 何ものにも代え難いし、
魚介類との取り合わせなら、
日本酒の右に出るものは無い。

いやいや。
白身魚にキリっとした白ワインだって
いいじゃないか。
レアに仕上げた赤身と合わせる、
ボルドーも捨てがたい......。

温暖な土地への旅では、焼酎と泡盛を、
絶対に・絶対に、外すことはできないし.........
(石垣島の泡盛は最高だった)。ぐぬぬぬ。


どの酒も それぞれに魅力があり、
どれも素敵なんだけれど、

その 酒のうまさに、裏打ちされた物語があれば、
尚のこと、味わい深くもなるというもの。

というわけで、
本書の出番と、相成るわけでございます。



◆◆◆

ウィスキー聖地『アイラ島』巡礼の旅にて、
村上氏が、"アイラ流"で 生牡蠣を楽しむ場面。

死ぬまでにやりたいことを、10個絞らねばならないのであれば、これは ランクイン確実っす。
じゅるるる.........。


「そこにシングル・モルトをかけて食べるとうまいんだ」とジムが教えてくれた。「それがこの島独特の食べ方なんだ。一回やると忘れられない」


僕はそれを実行してみた。レストランで生牡蠣の皿といっしょにダブルのシングル・モルトを注文し、殻の中の牡蠣にとくとくと垂らし、そのまま口に運ぶ。うーん。いや、これがたまらなくうまい。牡蠣の潮くささと、アイラ・ウィスキーのあの個性的な、海霧のような煙っぽさが、口の中でとろりと和合するのだ。どちらが寄るでもなく、どちらが受けるでもなく、そう、まるで伝説のトリスタンとイゾルデのように。それから僕は、殻の中に残った汁とウィスキーの混じったものを、ぐいと飲む。それを儀式のように、六回繰り返す。至福である。


人生とはかくも単純なことで、かくも美しく輝くものなのだ。


そして 2016年に、厚岸町にウィスキー醸造所ができ、「アイラ島に行かずして、夢叶うか?!」とか思っておりましたが、
(うまい酒は、旅をしない。)

そこは、小さい蒸留所。まったくもって入手できず。

どうしても飲みたい......と鬱々としていましたところ、その夢を(地元でではないですが)
叶えられた方がおられました。↓↓↓

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『和田由美の日々雑記』
「言ってみるもんだ!」

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亜璃西社さん 30周年、本当におめでとうございます!!
新刊、楽しみにしております。


「せ、せめてウィスキーだけでも、
ワシにお恵みくだせぇ...」と
アルコールの神に祈りを捧げておりましたところ、
天に願いが聞き届けられまして、

なんと、ある方から、
ご相伴の機会を賜ったのでありました......


akkeshi_whisky.png

『厚岸 NEW BORN FOUNDATIONS 2』


わたくしが頂いたのは「FOUNDATIONS 2」でしたが、
「FOUNDATIONS 1」は、ノンピートで優しい味わいだそう。がー、なまら気になるーー。


ママさんは「すっっごく飲みづらい」とおっしゃってましたが、いやはや これが、若さを感じさせながらも、ツンツンしすぎず、
微かに潮っぽさも感じられて。
うーん、なんとも美味いではないか!

来年の牡蠣祭りまでに入手し、地元の牡蠣と共に、
ぜひとも食してみたい、、、というのが
今の佐藤の夢です。

そして、ゆくゆくはアイラ島へ!......と、
酒飲みの夢は、膨らむばかりなのでありました。

bowmore1964.png

↑ ときどき行くバーにある1964年物のボウモア。
マスターが200万したっつってました。ぎゃふん!


ていうか、ナチュラルローソンで、
キルホーマンが売ってる衝撃......

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https://www.lawson.co.jp/lab/natural/art/1312811_5111.html
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去年の記事なのだが......。まだ購入できるのだろうか......。


現在のアイラ島にある醸造所は、
キルホーマン含め 計8箇所。
滞在日数がいくらあっても足りないぞ。

というか、肝臓もつかな。

『タイトル未設定』 (出版社未設定)
買い取ってやる度
☆☆☆☆☆

お疲れさまです、佐藤です。

店番・佐藤の偏った書評ばっか続いてもなあ、という訳で、店長・上坂に貸し出し中の、コレコレ

ドストエフスキー先生あるあるで、共に盛り上がろうと思っておりましたが、
ふと、上坂の机上に目をやりますと、


uesakano.jpg

一生読まなさそうな様相を呈している。

上坂よ、
この後も、残る先生の四大長編と、江川卓『謎とき』シリーズも控えているので、そこんとこ夜露死苦!

(うそだよ。返却いつでもいいからね。上坂、多忙につき瀕死寸前だもんね。)


ということで、最近読んだ本を一気に。
また偏りがちで、すみません。


ikkinihon.jpg


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①『火を熾す』ジャック・ロンドン

じわじわと迫る死の恐怖に、身も凍るような本作ですが、なんとこれを書いたのが、ワイハ(ハワイ)という驚き。

そして、ロンドンの自己ノルマが一日1,000語(日本語にすると約2,500字)だったとか。
『MONKEY vol.4』より)

この原稿量を、午前中で、毎日書く("Type"じゃない、"Write"ですよ)って、めちゃめちゃだな.........。
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②『老人と海』ヘミングウェイ

うーん、微妙。
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③『変身』フランツ・カフカ

河合隼雄先生 曰く
ドッペルゲンガーがうまく書けてるそうで。
そして、引きこもる人の心情は、
非常にザムザ的なんだと。

ちなみに、
仮面ライダーのセリフでおなじみ「変〜身!」は、
これからきてるんですって。
虫になる話だから。
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④『静かな大地』池澤夏樹

闇の歴史が身につまされる、
「北海道命名150年」節目の年に、道民必読の作品。

ちょっとだけ武ちゃん出てくるヨ!
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⑤『松浦武四郎 北の大地に立つ』合田一道

武ちゃんの偉業が気になる方は、
当社"武四郎マスター"である、
横田さんに聞いてください。

本文・柱・見出し・CAPも、ぜんぶ「筑紫」書体。

であれば、表紙まで徹底させてほしかったな。
まぁしょうがないよね。いろいろあるもんね。
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⑥『文字の霊力』杉浦康平

ここでは、書ききれないー。
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⑦『陰影論』戸田ツトム

こちらはオール「筑紫明朝」。ウェイトも同じなのかな。こんな思い切ったことできない......。
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⑧『ブックデザイナー鈴木一誌の生活と意見』
鈴木一誌

帯に引用の文章が、チクリと心に刺さります。

「カラーのプレゼンをチョイスするだけの編集者は、編集者ではなく消費者なのだと思う。......」
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⑨『ページと力』鈴木一誌

「デザインは編集なのである。」

この本のすべてが集約されていると思える、
最後の一文。

こういう方々の延長線上に自分がいるのだ......と、考えるとき、今まで作ったもの、片っ端からやり直したい気持ちになります。
わ〜ん!!
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ちょこちょこ増える本、
どう整理していこう......と思っておりましたが、
上坂に押し付ければいいのか。

上坂、よろしくねー。ういーす。

『文字の霊力(杉浦康平 デザインの言葉)』 (工作舎)
買い取ってやる度
★★★★★

文章中に、英語が混在することが珍しくない昨今。
皆さん、英語の扱いどうしていますか。

『SNS』、『Facebook』、『Twitter』、『Instagram』『GREE』............

そして、最大の難所ともいえるのが、
そうですね、『三代目 J Soul Brothers』です。

これ、ちょっと厄介な文言です。

(日本人は、書くのは"ヨコ"・読むのは"タテ"なので、原稿を流したときに初めて気付くことが多いですよね)

2_jsb.png

文字数も食うしで、非常に難儀。
"三代目"も含めた名称なので、英字を途中で90度横転にすると、すごく読みづらい。


文言を繰り返せば、その分 文字数減っちゃうので、
"(以下、三代目JSB)で対処"が、ベターかと思いますが、

文章をちゃんと読めば「JSB」の意味わかるんですけど、
途中からの拾い読みだと「なんの略じゃ??」となってしまう。

例えば、

弊社が、いつも大変お世話になっている「道総研」さん。正式名称は、こちらです。

dosoken_rogo_l.png


略すと dosoken_rogo_s.png ですが、

漢字だと、なんとなーくでも意味が掴めますよね。
「北海道のなんか研究する機関かな...?」みたいな。

でもこれ、英語で略したとたん、

2_hro.png

("H"okkaido "R"esearch "O"rganization)

ぬぬ?なんだろう??って、なりませんか。↑↑↑


お寿司屋さんで、
湯のみに読めない漢字がいっぱい書いてたりしますが、

2_sakana.png

魚偏のおかげで、魚だっていうのはわかる。
ひとめで「魚」として、グループ化できちゃうわけです。

漢字すげー。
漢字って、なんて合理的なんだ。

、、、的な、漢字の面白さ・奥深さ、
そしてアジア文化に至るまで、
杉浦グラフィズムも垣間見ることができる、本書。

これ読むと、文字を扱う楽しさが格段にあがりますよ!

『われらの時代・男だけの世界 ヘミングウェイ全短編〈1〉』 (新潮文庫)
買い取ってやる度
★★★★☆

作品を読んでもいないくせに、
「ハードボイルドは、イカつい&マッチョだから.........」なんて、ずっと食わず嫌いだったヘミングウェイ。

村上春樹 短編のまえがきでタイトルについて、
「ヘミングウェイの素晴らしい短編(『男だけの世界』高見浩氏 訳)を思い浮かばずにはいられない」的なことが書いてあって気になっていたのと、

佐藤どハマり、レイモンド・カーヴァーがヘミングウェイを愛読していたとのことで、
「短編&メジャータイトルは読んどいたほうが良いかね」......というわけで、

『ヘミングウェイ全短編〈1〉〈2〉〈3〉』&『日はまた昇る』読了いたしました。


hemingway_1.png

タイトルが、ことごとく格好いい。


こんなに繊細で瑞々しいだなんて、まったくイメージしていなかった。
自然の描写が、なまら素晴らしいです。
(これを24歳で書きあげたなんて!)

『二つの心臓の大きな川』での、ニックの川釣り風景と鱒の美しさ。そしてなんと言っても、あの匂い立つようなキャンプ飯!
これは『ぐりとぐら』ホットケーキ以来の衝撃でした。

『短編〈3〉』の「最後の良き故郷」でも、ニックは妹と共に森へ分け入るわけですが、追っ手から逃げているという設定上、どこかかしら暗い影があり、

(『二つの〜』だって"戦争の傷を自然によって癒す"という図が、十分暗いテーマなんだけれども)

ニックが自然の中で、
自分を取り戻してゆく様が生き生きと描かれており、

まるで、側で同じ風景を眺めているような.........。
本当に瑞々しく美しい文体。
短編の中では、この作品がいちばんぐっときたな。
あと、高見浩氏の訳もまじで素晴らしい。

、、、、、で、
なぜ今まで、ヘミングウェイを食わず嫌いしてきたのか。たぶん、この方のせいだと思うんですよね。

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"ミスターハードボイルド"
北方謙三先生。


......葉巻......女......ダブルのスーツ......
そして、セカンドバッグ.........。

なんだったら、ヘミングウェイを頭に思い浮かべるとき、それは、北方謙三先生だったりしたわけですよね。というわけで、こちらも併せて読了。


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書籍になってた!
ホットドックプレス誌、
伝説的お悩み相談『試みの地平線』。


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いよっ!
出ましたこの台詞!

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先生レベルに達しないと口にできない、
名言を連発。

先生は還暦を迎えられたときに、
「自分の歳の3分の1の娘(つまり20歳)としか付き合わない」と決めたという、非常に有り余る活力をお持ちの方。
(現在、70歳)

かたや、誕生日を目前に控え、
61歳の若さで、死を選んだヘミングウェイ。

ヘミングウェイの場合、戦争や事故とかもあるので、
比べられないんですけどね。

なんか、ハードボイルド括りということで、
考えちゃうところはありますよね。

60歳で20歳と付き合うって......。
元気があれば何でもできる。


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すてきなスナップも数々収録。

サントリー『マカ』をご愛飲という先生。
いつまでもお元気で!!

『大聖堂』 (中央公論新社)
買い取ってやる度
★★★★★

ドストエフスキー先生の、
五大長編を制覇しようと、読書中の『未成年』

これが『カラマーゾフ』へと
結実していくのだな......的なのが随所に見られ、
まあまあ楽しんで読めてはいたのですが、

なにせ主人公アルカージイが、気位ばかりが高いニート。「ていうか、働けよ!」と突っ込みを入れたくなる場面の連続。(ラスコーリニコフもそうだったんだけど)

物語のキーマンと予想されるマカール老人も、
いくら待っても登場しないわで、
結局アルカージイ、賭博ばっかしてんじゃん......
下巻いくの気重いな......短編で小休憩だ。

というわけで、この度わたくし、
レイモンド・カーヴァーデビューを果たしました。

率直に言って、本当に本当に素晴らしかった。
小休憩のつもりが、もう『未成年』完全中断。
四冊立て続けに購入、一気読みいたしました。
頼むから静かにしてくれ〈Ⅰ〉愛について語るときに我々の語ること大聖堂

だいたいの物語の主人公が、家庭が崩壊しつつある(もしくは崩壊してしまった)、
アル中経験ありの、中年男。

そして、淡々とした文体で紡がれる、
労働者の諦めや、哀しみ。

どの短編もほぼバッドエンド。
嫁に逃げられたり、子どもが死んだり、
アル中に逆戻りしたりで、
ストーリー的には救いがなくて、
ヘビーなものも多かったりします。

でも、そこから感じるのが、
作者カーヴァーの、なんというか、
物言わぬ労働者たちへのシンパシーというか、
寄せる思いというか、

そういう、社会に翻弄されるしか術が無い、
弱き者の物語へ向けられた、視線を感じるのです。

(作風は全然違いますが、ドストエフスキー先生も、農奴や下級労働者という、弱き者へ向けられた思いを感じる作家っす)

作品もさることながら「象」巻末の、
訳者 村上春樹による解題に心打たれるものがあり、
何度も読み返してしまいました。

墓参りのため、
ワシントンのカーヴァー宅を訪れた村上氏。

カーヴァーの書斎で、偶然手にとったマーク・ストランドの一編の詩によって、故人であるカーヴァーと、
心が通い合った(ように佐藤には感じられる)瞬間。


「いいかい、僕が死んだことを不在ととって哀しんだりしないでくれ。そんなことは必要じゃないんだ。むしろ僕が野原の中にいるときには、僕の方が野原の不在だったんだ。僕が物事を崩していたんだ。わかるだろう?」


日本で出版されているカーヴァー作品を、
すべて訳している村上春樹。
村上氏が訳しているから、ということを超えて、
カーヴァーの作品に、村上春樹の声を聞くことができる読者も、多いのではないかと思います。

村上春樹が以前、何かの書籍で
「河合隼雄氏が、自分の本当の気持ちを理解してくれた」というようなことを書いていたのですが、

カーヴァーもその一人だったのではないかな、と
佐藤は推察するのです。

理解というか、文学的同士として気持ちをわかり合えた相手というか。
そんな、誰ともわかり合えない気持ちを分かつ相手を失うということは、どういうものなのかな。


sotei_s.jpg

カーヴァー作品のタイトルが如き、
素っ気ない装幀(なんと和田誠)も、実にちょうどいい。


佐藤的カーヴァーマスト作品。

「ささやかだけれど、役にたつこと」
(これはみんな絶対読んだ方がいい)
「大聖堂」
「象」
「足もとに流れる深い川」
「使い走り」


哀しみがじんわりと心に染みわたる.........。
これは、カーヴァー制覇まで
『未成年』には戻れないな。

『だから荒野』 (文藝春秋)
買い取ってやる度
★★☆☆☆

しばらく鞄に入れっ放しで手つかずだった小説が、
飲み会の翌朝に台所でカップ麺のスープを吸い込み、
絶妙な匂いを放っていた。
その横には缶酎ハイが転がっている。


泥酔状態で〆のカップ麺を食べながら、
本でも読もうなどと企て、
汁をこぼして「あちっ!」とかいいながら、
結局は放置するという愚行に出たのだろう。


そんな堕落と深酒の日々を過ごしていたため、
本をあまり読めずにおり、
スマイル書房を長いあいだ留守にしてしまった。
店主失格!の幻聴が聞こえてくる。
いや、生の声なのだろうか...。


で、その文庫にファブリーズを吹き付けたところ、
紙はクタクタに波打っているけれど、
一応、読めるまでには匂いが気にならなくなった。

それが本書だ。
本書なのだけれど、
いつ購入したか記憶が定かではない。
泥酔状態で書店をふらふらとしていたのだろうか。


疑問を抱きながらも、読み進めていった。
内容やすぐ予想がつく結末はともかくとして、
サラサラとページをめくっていけるリズム感。


この小説はある平凡な家庭の主婦が、
夫や子どもたちの粗野な言葉と
見下すような態度に我慢できなくなり、
突如として家を飛び出す物語だ。
主婦も主婦で、欠点がないわけではないのだが...。


ストーリーはハッピーな方向へと展開する。
裏切りもどんでん返しもなく、
予定調和的にゴールへと進む安心感はあったが、
心をグッとつかむ衝撃や感動とは出会えなかった。


とはいえ、読後はほんの少し反省した。
自分も母につい冷たくあたる時もあるので、
気をつけなければならないな、と。


そんなことを考えていたところで、
本書を鞄に仕舞った経緯を思い出した。


母だ。母はわりと本を読むタイプで、
実家に帰った時に、
「読んだから貸す」というから借りたのだ。


微妙な香りのするクタクタの本書を見て、
お母さん、ごめんなさい、と大いに反省した。

『ねじまき鳥クロニクル』 (新潮文庫)
買い取ってやる度
★★★★★

本のセレクトに、著しい偏りが見られる佐藤ですが、
今年も何卒よろしくお願いいたします。


村上春樹主義者の皆さま、
ついに最新作の予約が始まりましたね!

shinkan_yoyaku.jpg
強めタイトル。


なにかと不便なハードカバーで読むか、
一年待って文庫で読むか......まじで悩ましいところ。
ハードだともったいなくて、お風呂で読めないしな。
いやーん、どうしようー!

なまら素晴らしかった「女のいない男たち」
村上春樹流 一人称の
ネクストステージを感じさせるものがあり、
長編への期待が高まるばかりです。


最新作が出版されるにあたり、
過去の作品を再読しておきたい気持ちがMAX。
一番のお気に入り「ねじまき鳥クロニクル」再読いたしました。

ああ、何度読んでも心が打ち震える......!

同じ時代に生き、
リアルタイムで作品に触れられる喜びを感じる。
村上春樹は、そんな作家の一人なのです。


この物語の山場はなんと言っても、
間宮中尉と本田伍長のノモンハンでの戦時体験。

太刀打ちできないほどの、圧倒的な暴力(戦争)と、絶対的な悪(皮剝ぎボリス)に、
完膚なきまでに叩きのめされた、
敗者である間宮中尉に、

佐藤は、
「ガリラヤのカナ」のアリョーシャを見ることができ(恩寵を受けられた者として)、
「トカトントン」の手紙の主を見ることができるわけなのです(叩きのめされた敗者として)。

でも、そもそも恩寵の存在など知らないほうが、
その人にとっては、心安らかに過ごせるわけで。

(それは"のうのうと過ごす凡夫"であり続ける、ということにはなるけれども)

たとえ恩寵なり恩恵を受けられたしても、
アリョーシャだって、ロシア皇帝の暗殺を企てて斬首されちゃうんだし(未完の二部で)、

啓示に従って進もうとすればするほど、不幸になってしまうパラドクス......になるわけですよね。

モンゴル人に井戸に放り込まれるの、嫌だしな。
あぁ、心の底から、
凡夫に生まれてきてよかった.........。



◆◆◆


話が逸れますが。

毎年恒例のニュース、
ノーベル文学賞を村上春樹氏が受賞するか否か問題。

カフェでファンたちが集い、
受賞の報道を待っているのをニュースで見るにつけ、

「愛するが故に、逆に愛の無いことになってるから!」と、そのパラドクスに対して、
心の中でツっこみを入れている佐藤。

(村上氏的は「ノーベル賞を取るかどうかなんて放っておいてくれよ」という心境なのではないかな、と思います。)

だから、
ボブディランも姿をくらませたのであろうし、

「そなたに我々のこの偉大な賞を授けて進ぜよう」という姿勢がムカつくのであろうし、
その反骨精神なくしては、過去の名曲など生まれていないでしょうしね。

ノーベル賞、受賞しなくてもいいです。
というか、むしろ受賞しないでほしい。
売り切れで読めないとか、うんざりすることが勃発しそう。



◆◆◆


ノーベル文学賞の行方はよくわかりませんが、
佐藤は「村上春樹はお札になる」説を、以前より提唱しております。

だって、夏目漱石がお札になったんだから、
村上春樹がならないわけがない。

欲しいな、村上春樹1,000円札。
(5,000円は気が重いので、1,000円くらいがちょうどいいと思います。)

がんばって100歳まで生きられたら、
使えるかもなぁ。

murakami1000_2.jpg
ぜひとも安西水丸で!

『マイ仏教』 (新潮新書)
買い取ってやる度
★★★☆☆

以前、ラジオでみうらじゅんが、
5年かかって『アウトドア般若心経』を
やっと完成させたという話をしてて、
(街中で文字をかき集め般若心経を完成させる。文字の使い回しは不可。)

自分、仏教のことなにも知らないな......
でも、さすがに教典読むのはハードすぎる......

と思いまして、
手塚治虫先生作『ブッダ』と迷った末、
佐藤家の本棚には余裕がないので、
こっちにしました。
(漫画って、すごい場所とられますよね)


前半の、氏の生い立ち→いかにして仏像マニアになっていったのかというくだりは、
あんまりおもしろくないのですが、

後半の、みうらじゅん的仏教観が繰り広げられるところは、非常に納得できたし、おもしろかったです。

諸行無常だし、諸法無我なんだから、
「自分探し」などしても見つかるわけがない。
そんなことより「人のご機嫌をとる」修行をして、
「自分なくし」を目指したほうが、
よりよく生きられるぜ。

、、、というようなことを、
お釈迦さま(とボブディラン)は説いているのではないか、的なことが書いています。
(文字量ぜんぜんない&Q数でかめなので、
詳しくは本書をご覧ください。)


......で、読み終わって、
そういえば、以前「漱石流の自分探し」だと書いたことあるな、と思い出しまして、『門』再読。


mon.jpg
買い直すべきかな。表紙もどっかいっちゃいました。


佐藤は、この、
絶望もないけど希望もない、結局なにも解決しないまま、なし崩しに老いていく夫婦の話を、ことある毎に読むのですが、

宗助も参禅しに行ったところで、
自分が「かえって迂闊に山の中へ迷い込んだ愚物」であり、「門の下に立ち竦んで、日の暮れるのを待つべき不幸な人」だと気付かされただけで、

自分を証明するために(←佐藤の独自解釈)友人の妻を奪ったものの、結局、自分の存在の小ささを痛感するだけなんですよね。


「自分探し」なんてしたって、
なんにも見つかるわけがない!
だって、旅人でおなじみ 中田英寿が
「自分」を見つけたようには見えないし!

それより、武田修宏とか前園真聖のほうが、
自分のいるべきポジションを見極めて、
がんばってる感じがする。

武田なんて、サッカー選手で全然関係ないのに、
石田純一を脅かす存在にすらなってるし。

「こうだったらいいのに...」
「ああいう仕事のやり方、かっこいいな...」

そんな煩悩をかなぐり捨てて、
目の前の仕事を真剣にこなすのだ!
がむしゃらに向き合うことで、
辿り着ける場所がある!

......と、
テレビに出ていた前園を見て、
気持ちを新たにした佐藤なのでした。


hiranokouga_hannyashinkyo.jpg
佐藤家の平野甲賀作「般若心経」。(直筆サイン入り)


祖父江慎との対談で、
「無」を一つずつ書き分けるのに大変苦労したと
おっしゃっていた平野氏。

そういえばみうらじゅんも、
『アウトドア般若心経』で苦労したのが
「無」だと言ってたな。

般若心経の中でも登場回数が多い、
かつ、街で探そうとすると
中々見つからない文字のようで、
その時についた、無煙焼き肉を探すクセが
抜けないらしいです。

ちなみに「若」の字は、
『ちゃんこダイニング若』だそう。

『クリーピー』 (光文社)
買い取ってやる度
★★★☆☆

少しモヤモヤすること。
ホームに走り降りた瞬間、地下鉄が発車。

少しモヤモヤすること。
瓶ビールがサッ●ロなのに、グラスはア●ヒ。

少しモヤモヤすること。
自販機から出てきたお釣り870円が
全て100円玉と10円玉。

少しモヤモヤすること。
ラム肉とパクチーの水餃子を食べた
レポーターの「甘い」という感想。

少しモヤモヤすること。
「イソジンは家にあります」と
処方を断るとイヤそうな顔をする内科医。

少しモヤモヤすること。
スタンド・バイ・ミーの
「Darling,darling」を「Going,going」
と信じ切って口ずさむ友人。

少しモヤモヤすること。
本作主人公の大学教授がそれまでに
散々恐ろしい目に合わされているにも関わらず、
「悪の天才」とまで評されている犯人の部屋を
教え子とともに訪ねて行き、
案の定教え子を殺されてしまった浅はかさと、
尻すぼみなどんでん返しで締めくくられる結末。

少しモヤモヤすること。
この回りくどい書評のスタイル。

『世界文学全集〈19〉カラマーゾフの兄弟(全)』 (集英社)
買い取ってやる度
★★★★★

『白痴』、なかなか読み進められず。

いや、面白いんですけど、たぶん佐藤は、
ムイシュキン公爵のことが、あまり好きじゃないんだと思います。
公爵の天然ぶりがイラつかせるからだろうか...。

というわけで、
あんたの執着心はヒグマ並だね......というわけで、
『白痴』をほったらかして、『カラマーゾフの兄弟』江川 卓訳で再読しました。

最初に読んだのは、原 卓也訳。これも読みやすいと思います。
でもどうしても佐藤は、江川卓訳でカラマーゾフが読みたいのだ!
だって「謎解き」で引用されていた氏の訳が、まじすばらしかったから!

でも江川氏訳は絶版してて、
中古だとしても3万某とかしちゃう。

「しかし、どうしたって読みたい...」
「でも、しがない会社員が本に3万かけるとか、どういうこと...」など、ぐるぐる考えていたのですが、

この前、ナイスアイデアが閃きました。
図書館で借りればよいのだ!


karamazofu.jpg
一番下にあるのが借りた本。でかい。
ていうかカラマーゾフだらけ。なんなんだこの家は。


佐藤 お気に入りは「神秘的な客」と「大審問官」、
何度読んでも、新たな感動と出会える
「ガリラヤのカナ」、

そして、ミーチャの心象風景を描いた
「証人たちの供述。嬰児」。
ミーチャの内なる"カラマーゾフ"を、畳み掛けるように読者に訴えかける、なまら感動的な場面。
江川氏の訳が本当にぐっとくる!


======== 江川卓訳 ========

 やがてじき近くに集落が現れ、黒々とした、あくまでも黒々とした百姓家が見えはじめたが、その百姓家のなかばは火事で丸焼けになり、焦げた丸太が突き出ているばかりである。............〈中略〉............
「なんで泣いているんだ?なんだって泣いているんだ?」とミーチャがたずねる。
「嬰児(ややこ)でさあ」と御者が答える。「嬰児が泣いているんでさあ」するとミーチャは、御者が「子供(ジチャー)」と言わず、「嬰児(ジチョー)」と言ったことに、ふと胸をつかれる。百姓が「嬰児」と言ったことが彼の気に入る。哀れさが増す感じなのだ。


「それより聞かせてくれよ。どうして焼け出されの母親たちが立っているんだ、どうしてみんなが貧しいんだ、どうして嬰児はみじめなんだ、どうして曠野は荒れはてているんだ、どうしてみんな抱き合って接吻をし合わないんだ、どうして喜びの歌をうたわないんだ、どうしてみんな黒い不幸のためにあんなに黒くなってしまったんだ、どうして嬰児に乳をやらないんだ?」


こう言いながら彼は心のうちで............〈中略〉............みなのために何かをしてやりたい気持にかられていることを感じた。それはもうけっして嬰児が泣かずにすむように、その嬰児の黒くひからびた母親が泣かずにすむように、いまこの瞬間からもうだれの目にも一滴の涙もなくなるようにするためであり、しかもそれをいますぐ、いますぐやりとげたいのだ、一刻の猶予もおかず、どんな障害にも臆せず、カラマーゾフ流の抑制のなさのあらんかぎりを発揮してでも、そうしてやりたいのだ」


この後、ミーチャの精神状態がキリストレベルに達しちゃうわけですが、(「すべての嬰児のためにシベリアに行く」とか言い出すあたり)

そのきっかけとなる、心を揺さぶられる場面。
でもアメリカに逃亡しちゃうんですけどね。エヘヘ。

どうしたってミーチャの夢を、
"黒で塗りたくりたい"ドストエフスキー先生。(カラ=黒/マーゾフ=塗る)
作者の気持ちの高揚を、江川氏は余すところなく表現している!

訳が変わっても、物語の本質は変わらないのですが、
江川氏の訳は、なんというか、言葉の選び方とかユーモアの表現の仕方とかが、うまいような気がします。
それで、どんどん読まささってしまう。

原氏の「童(わらし)」もいいんですけど、「嬰児(ややこ)」のほうが、しっくりくる気がしますし。
(亀山氏の「餓鬼(がきんこ)」は、もう"先人たちが使ってないから"的な印象。
嬰児でいーじゃん。)

いや~でも、アリョーシャとイワンを、母の養母である老婦人が連れ去る場面。
これは原氏に軍配かなー。


======== 原卓也訳 ========

婦人がすぐに当のグリゴーリイにまで頬びんたを見舞い、......〈中略〉......「とにかくお前は抜作だよ!」馬車で立ち去りしなに、夫人は一喝くらわせた。


ビンタからの抜作って!(江川氏は"とんま")
こういうところでも、ちょいちょい笑いをぶっ込むのを忘れない先生。

涙あり、笑いあり、感動あり、サスペンスありで、
さまざまな要素がひしめきあっているのに、すべてが破綻なく成立しているのがこの作品のすごいところ!
うーん、延長しちゃおうかなぁ。。



◆◆◆

これ、他の訳(米川正夫氏とか)も読んでみて、
自分の好きな訳を繋ぎ合わせて「カスタマイズ カラマーゾフ」を作るのを、老後の楽しみにしてみるのは、どうだろうか。

とか、一瞬思ったんですが、
完成と同時に力尽きて死ぬな......と思い至ったので
撤回。

将来、お金持ちになって大きな家に住んだ時に、
絶対、江川卓訳を買ってやるんだー。(かなり場所をとるので)
というかその前に集英社、文庫を出してちょーだい!!

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